「台湾史もぐら叩き」へ

三田裕次の一口コメント


<凡例>

1.近年日本で出版(市販)された台湾関係単行本全般を対象とする。但し、政治色の強いもの、専門性の高いもの、娯楽系などは原則除外。

2.その本の特色や読むときの「注意事項」などに重点をおく。なおコメントは主として「歴史(終戦までの台湾史)」の観点から。

3.掲載は順不同(読むべき順番などとは無関係)。

4.紹介する書籍は何れも  呉三連台湾史料基金会  に納本済み。




番号をクリックして詳細をご覧下さい

01 ジョージ・H・カー著 『裏切られた台湾』

02 安渓遊地/編 平川敬治/編 『遠い空−国分直一、人と学問』

03 柯 徳三著 『母国は日本、祖国は台湾』

04 劉 麟玉著 『植民地下の台湾における学校唱歌教育の成立と展開』

05 柳本通彦著 『明治の冒険科学者たち』

06 陳舜臣著 『怒りの菩薩』『道半ば』

07 併読を強く勧めたい3冊の『台湾』

08 ジョン・J・タシク・ジュニア著 『本当に「中国は一つ」なのか』

09 鹿野忠雄著 『山と雲と蕃人と』

10 鈴木茂夫著 『台湾処分 一九四五年』

11 石光真清著 『城下の人−石光真清の手記 1

12 湖島克弘著 『阿片試食官』

13 杉本信行著 『大地の咆哮』


















































ジョージ・H・カー著『裏切られた台湾』


戦後初期の台湾にかなりの興味のある人には必読の書。日本では「戦後初期の台湾」に関してこれだけ詳しい本は出ていない。著者の経歴等からして、信憑性はかなり高いと了解して良い。但し、台湾に対する「思い入れ、愛情、愛着」が極めて深かった人なので、その点は留意すること。翻訳はかなりこなれており、読み易い。若干のミス(組織名称の間違いなど)はあるが、いずれも致命傷ではない。

http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31733147

■ジョージ・H・カー
■翻訳/蕭成美 監修/川平朝清
■同時代社
■4,200円(税込)

(2006 09 01)

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安渓遊地/編 平川敬治/編『遠い空−国分直一、人と学問』


日本時代の台湾を研究したことのある人であれば、専門が異なっても國分直一先生の名前は目にしたことが有る筈である。私は残念ながらご生前に連絡させていただく機会はなかったが、この本を通じて、噂に聞いていた「真面目、温厚、そして時折ユーモラス」なお人柄に接することができた。

本書は専門書(民族学、文化人類学)ではなく、國分先生の生い立ちから始まる自伝のようなもので、断片的ではあるが、折々の時代背景を推察することができて、かなり面白い(戦後も台湾大学に留用、昭和24年夏に三本マストの練習船「日本丸」で引揚げ)。惜しむらくは誤字等が散見される。

http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31684768

■安渓遊地/編 平川敬治/編
■海鳥社(2006年3月刊)
■3,360円(税込)

(2006 09 09)

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柯 徳三著『母国は日本、祖国は台湾』


著者は芝山巌第一回卒業生内の一人、柯秋潔先生のお孫さん(参考:第一回卒業生の正式呼称は「芝山岩学務部卒業生」計六名)。 柯秋潔先生はその後日本で台湾語を教えたこともあり、「歴史」に断片的に名が残っているが、本書の主題である「柯家三代記」は初見であった(その理由は本書の内容からも窺える)。 柯家は極めて特殊な家族であり一般化することは出来ないが、同家に多大な影響を与えた「日本時代50年」を概観する上で有益な文献である。
なお、呉三連台湾史料基金会納本前に一読した限りでは、「事実誤認」や「後知恵による脚色と思われる箇所」は事実上皆無であった。更に加えて、非常に読み易い。

http://www.amazon.co.jp/%6bcd%56fd%306f%65e5%672c%3001%7956%56fd%306f%53f0%6e7e%2015%6216%308b%65e5%672c%8a9e%65cf%53f0%6e7e%4eba%306e%544a%767d/dp/4434066544/sr=1-4/qid=1157980899/ref=sr_1_4/249-9643142-6240357?ie=UTF8&s=books

■柯 徳三
■母国は日本、祖国は台湾−或る日本語族台湾人の告白
■桜の花出版(2005年8月刊)
■1,470円(税込)

(2006 09 18)

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劉 麟玉著『植民地下の台湾における学校唱歌教育の成立と展開』


専門書であるが、類書は皆無なので、敢えてご紹介する次第。内容は題名の通りであるが、忘れ去られてしまいつつある「公学校唱歌」の曲譜が若干収録されている。音楽に特に興味のある人にはお勧め(ある程度の専門知識は必要)。
<参考>
(1) 著者は1990年代に私の「台湾史補習班」に参加した唯一の「(両親共)外省人」二世。  愛称「たまちゃん」。
(2) 唱歌の一部は、台湾の「まろやか」翁の「古い記憶のメロデイ」で再現して貰っている。

http://www.geocities.jp/abm168/index.html


■劉 麟玉
■植民地下の台湾における学校唱歌教育の成立と展開
■雄山閣 (2005年2月刊)
■4,7250円(税込)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4639018789/ref=sr_11_1/249-8875544-2799555

(2006 09 21)

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柳本通彦著『明治の冒険科学者たち』


明治期の台湾に深く関与した三名の碩学(伊能嘉矩、田代安定、森丑之助)について、非常に分かりやすく記述した新書版。辟易するほど難解な明治期の文章をかなり読み込んだ上での記述の如く見受けられる。所謂「入門書」として最適であり(一般向けの類書も未見)、興味のある人には一読をお勧めする次第。先ずこれを読んだ上で、更に興味が湧けば次の段階に進むと言う方法が良かろう。
呉三連基金会納本前に一読した限りにおいては「事実誤認」は見当たらなかった。

■柳本 通彦
■明治の冒険科学者たち−新天地・台湾にかけた夢
■新潮社 (2005年3月刊、新書判、223ページ)
■735円(税込)
 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4106101084/sr=1-2/qid=1159019091/ref=sr_1_2/ 249-8875544-2799555?ie=UTF8&s=books

(2006 09 24)

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陳舜臣著『怒りの菩薩』『道半ば』


絶版となって久しいが、古書マーケットで安価に購入できるので紹介する次第(所謂「お買い得」)。作家陳舜臣氏は戦後初期の一時期、台湾に「帰って」教職に就いているが、その頃のことを題材にした同氏の作品は、私が知る限りではこれだけである。

■陳 舜臣
■怒りの菩薩
■集英社(1985年8月刊、文庫:300ページ) http://www.amazon.co.jp/gp/product/4087490165/ref=olp_product_details/249- 8875544-2799555?ie=UTF8

著者お手の物の「推理小説」仕立てであるが、同氏が当時実際に見聞したことなどが随所にちりばめられているであろうことは想像に難くない。
一方、近年出版された同氏の回顧録の中にその頃の体験などがかなり詳しく書かれている(「漸く」の感あり)。一般の台湾人とは「生い立ち」が異なることもあり、比較的に客観的な立場で観察することが出来た人なので、一読の価値はある。なお、題名を「道半ば」とした由来については、一読した限りでは分からなかった。

■陳 舜臣
■道半ば
■集英社(2003年9月刊、単行本、334ページ)
■1,995円(税込)
 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4087746690/sr=1-2/qid=1159195151/ref=sr_1_2/ 249-8875544-2799555?ie=UTF8&s=books

(2006 09 26)

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併読を強く勧めたい3冊の『台湾』


歴史に興味がなくても、どうしても歴史的背景を知らなければならない場合があるので、台湾史(通史)の新書3種を紹介する。各々の執筆時期、年代範囲などは異なる。
なお、何れも「事実誤認」は僅少であるが、各々の著者の「立場」が異なるので、3冊併読を「強く」お勧めする。絶版となっているものもあるが、古書マーケットで安価に入手可能。

■台湾−人間・歴史・心性
■戴 国W
■岩波書店(1988年10月、岩波新書:242ページ)
■663円(税込)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/400430041X/ref=sr_11_1/503-2046333-6533558?ie=UTF8

■台湾−四百年の歴史と展望
■伊藤 潔
■中央公論社(1993年8月、中公新書:252ページ)
■735円(税込)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4121011449/sr=1-1/qid=1159580384/ref=sr_1_1/  503-2046333-6533558?ie=UTF8&s=books

■台湾−変容し躊躇するアイデンティティ
■若林 正丈
■筑摩書房(2001年11月、ちくま新書:254ページ)
■777円(税込)
 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480059180/ref=sr_11_1/503-2046333-6533558?ie=UTF8

(2006 09 30)

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ジョン・J・タシク・ジュニア著『本当に「中国は一つ」なのか』


台湾の「国際法上、国際政治上」の複雑なステイタスを概観している。専門用語の羅列はなく、翻訳もこなれており読みやすい。僅かだが、事実誤認、認識不足、用語の不統一などがあるが、全体像を把握するのに有益。なお、この本は所謂「両論併記」ではなく、またこの本とは異なる立場で編集した単行本は未見。

■本当に「中国は一つ」なのか−アメリカの中国・台湾政策の転換
■ジョン・J・タシク・ジュニア
■翻訳 小谷まさ代、近藤明理
■草思社(2005年12月、単行本:272ページ)
■1,890円(税込)
 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4794214618/ref=sr_11_1/503-2046333-6533558?  ie=UTF8

(2006 10 06)

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鹿野忠雄著『山と雲と蕃人と』


私は運動全般「苦手中の苦手」なのでコメントするだけの知見はないが、山好きの人達にとっては必読の書であると断言して良いであろう。近年類書(台湾山岳関連)は出版されていない。

なお、当時の高砂族の人達のことも随所に出ており、その観点からも興味深い。

■山と雲と蕃人と−台湾高山紀行
■鹿野 忠雄
■文遊社(2002年2月、単行本:438ページ)
■3,675円(税込)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4892570370/sr=1-2/qid=1160229434/ref=sr_1_2/503-2046333-6533558?ie=UTF8&s=books

(2006 10 08)

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鈴木茂夫著『台湾処分 一九四五年』


著者は台湾で終戦を迎えた「中学生の兵隊さん」(注)。自分自身の体験に加え、かなりの資料を収集した上での執筆であり迫真の内容。また「日記小説」体で、非常に読みやすい。

但し、史実(体験及び資料による確認)+脚色+創作が混在しており、流石の私もその辺りを完全には「解読」出来なかった(例えばある箇所について著者から私の蔵書からもアイデアを得ていると「告白」されるまで、全く気付かなかった)。

なお、台湾で中国語版も出ており(晨星出版)、「日本語/中国語」学習用にも利用できるであろう。


注:

台湾では、昭和20年3月末時点で、中等学校3年以上の生徒が陸軍の兵士になっている。法的根拠等はある程度調査済み。

■台湾処分 一九四五年
■鈴木 茂夫
■同時代社(2002年4月、単行本:360ページ)
■3,045円(税込)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4886834701/sr=1-2/qid=1160374163/ref=sr_1_2/503-2046333-6533558?ie=UTF8&s=books

(2006 10 11)

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石光真清著『城下の人−石光真清の手記 1』


「領台」初期の戦いについて、現在容易に入手可能な本はこれのみ。石光真清は陸軍将校として従軍しており、その際の手記。当然「脚色」は行われているであろうが、自分自身の体験を元にしたものであり、史料価値は高い。

「石光真清の手記」は計4冊であるが、台湾関係はこれのみ。なお、「石光真清の手記」は近年NHKでドラマ化されている(題名は失念)。

■城下の人−石光真清の手記 1
■石光 真清
■中央公論新社(1978年1月、文庫: 330ページ)
■780円(税込)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4122005507/sr=1-2/qid=1160379188/ref=sr_1_2/503-2046333-6533558?ie=UTF8&s=books

(2006 10 12)

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湖島克弘著『阿片試食官』


題名に「台湾」が入っていないからであろう。「台湾業界」では殆ど話題にならなかったようであるが、この本は面白い。

私は「文学の味」についてはサッパリ分からないが、「歴史(台湾史)」を題材にした「読み物」としてはかなりレベルが高い。杜聡明博士が少年期から登場しており、その辺りからも丹念に資料を収集した上での著作と看做してよかろう。

なお、小説であるから、「史実+脚色+創作」が混在していることは当然で、その点は了解しておく必要がある。この本を読んで興味が湧いた分野についてさらに詳しい本を読む、と言う方法が良かろう。

■阿片試食官
■湖島 克弘
■徳間書店(1999年11月、単行本:365ページ)
■1,890円(税込)【絶版】
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4198610940/ref=sr_11_1/503-2046333-6533558?ie=UTF8

(2006 10 13)

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杉本信行著 『大地の咆哮』


この本は先ず「あとがき」から読むべきである。外交官として中国及び台湾に深く関わった著者が最後の気力と体力を振絞って書かれた「遺書」である。

私の「専門」分野(台湾関連及び外為法)から見ると些少ながら事実誤認や認識不足と思われる箇所はある。また、私個人としては俄かには同意致し難い提案なども含まれているが、何れも討議をする上での貴重な「叩き台」であり、一読をお勧めする。

特にODA(政府開発援助)についてはかなり詳しく書かれており、一般読者は消化不良を起す可能性があるが、概要を把握しなければ、意見は述べられないことを認識すべきである。

著者の今後の御活躍に接する ことが出来ないのは眞に残念であり、ご冥福を祈る次第である。

■大地の咆哮−元上海総領事が見た中国
■杉本 信行
■PHP研究所(2006年6月、単行本:356ページ)
■1,785円(税込)
http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A7%E5%9C%B0%E3%81%AE%E5%92%86%E5%93%AE-%E5%85%83%E4%B8%8A%E6%B5%B7%E7%B7%8F%E9%A0%98%E4%BA%8B%E3%81%8C%E8%A6%8B%E3%81%9F%E4%B8%AD%E5%9B%BD/dp/4569652344/sr=1-1/qid=1162381123/ref=sr_1_1/503-2046333-6533558?ie=UTF8&s=books

(2006 11 02)

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